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朝の風景


 夜明けまだ目覚ましが鳴る前に、外から聞こえる鳥たちのざわめきでふと目を覚ますとオレは左腕に違和感を感じた。
 左腕に目を向けると、そこにはオレの左腕を腕枕にして『すぅ・・・すぅ・・・』と寝息を立てている彼女の姿があった。
 暫しその寝顔を見つめてから、彼女を抱き寄せてオレは再び微睡みに落ちていった。

 目覚ましの音で再び目覚めたときにも、彼女はまだオレの腕の中で安らかな寝息を立てていた。オレは彼女が目覚めるまでもうしばらくの間このままでいたいと思い、再び微睡みに落ちかけたとき、誰かが部屋をノックしてきた。

「久遠が起こしに来たのか?」

 俺は思わずそうつぶやいていたが、どうせ放っておけば勝手に入ってくると思いそのまま返事もせずにいた。

「夷月、起きていますか。」

 莉緒がオレにそう声をかけながら部屋に入ってきて、未だに起き出していないオレと抱きしめられた彼女の姿を見て、目を大きく見開いてそのまま固まってしまった。
 莉緒の声で隣の彼女も目を覚ましたらしく、オレに抱きついたまま

「・・・白兎ぉ・・・もう朝ぁ?」

とつぶやいた。

「玲亜!!」
「玲亜!?」
 オレと莉緒の声が被さった。
 玲亜はようやく目が覚めたらしくキョトンとした顔で、暫くオレを見つめてから改めて自分がオレに抱きしめられていることに気が付いたらしく

「・・・・・えっ、夷月!」

と声を上げると同時に

「きゃー、離しなさいよ!!」

という、悲鳴と同時にオレに向けて平手を放ってきた。

 衝撃を覚悟して、思わずオレは目を瞑ってしまったが、予期していたような衝撃は訪れなかった。恐る恐る目を開いてみると莉緒が玲亜の手を止めてくれていた事に気が付いた。オレが思わずため気をついていると。

「夷月、どうして玲亜がここにいるのです!?」

「知らん、目が覚めたらそこにいた。玲亜に聞け。」

「玲亜」

「昨日夜中に、白兎の所で眠ろうと思って部屋を出たまでは覚えているのだけれど....」

「はぁ.......」
「はぁ.......」

 オレと莉緒は同時に溜息をついた。取りあえず莉緒は玲亜のこの説明で納得してくれたようで

「玲亜、早く着替えてきなさい」

と玲亜を自分の部屋に帰らせた。

玲亜が部屋から出たのを確認した莉緒が、改めてオレに向き直ってきた。
そうして少しすねた顔をして

「所で夷月、どうして玲亜を抱きしめて寝ていたんですか??」

ときた。オレは莉緒から視線を逸らしてぼそりとつぶやいた。

「莉緒だと思っていたんだよ。」

「えっ?」

「玲亜がオレの隣にいるなんて全く考えもしなかったからな。」

「ぁ」

 オレがそう言うと莉緒が真っ赤になって俯いた。そんな莉緒を見ていたオレは、半ば衝動的に莉緒を抱き寄せ、その耳元に向けて呟いた。

「莉緒が望めば、いつでも抱きしめて一緒に寝るよ。」

「夷月......」

 莉緒は潤んだ瞳でオレを見上げていた。その瞳に吸い込まれるように俺たちの距離は徐々に近づいていき、その日最初のキスをした。

[Fin]

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